通年採用が普及している中、人材を採用するために、年間数百万円のコストをかけている企業は少なくありません。できることなら採用コストを抑えたいという採用担当の方も多いのではないでしょうか。
今回は、採用コストの算出方法や、見直し方、削減ポイントについてご紹介します。
採用コストとは
採用コストとは、企業が人材を採用する際にかかる費用を指します。
マイナビの調査によると、2019年卒採用の全体にかかる採用費(※)の総額平均は557.9万円だったとしていますが、上場企業のような企業規模の大きいいわゆる大企業の採用総コストは約1700万円にもなり、一方非上場(中小)企業の採用総コストは約370万円ほどです。
その差は1400万円以上にもなるため、全体の平均相場を見るよりも、自社の企業規模と照らし合わせてみていく必要があります。
全体 | 557.9万円 |
上場 | 1783.9万円 |
非上場 | 375.1万円 |
製造業 | 585.1万円 |
非製造業 | 543.9万円 |
※採用費:広告費(就職情報サイト掲載・イベント出展を含む)、入社案内やホームページ・ダイレクトメールなどの採用ツール作成費、DM発送(インターネットDMを含む)費、セミナー運営費(会場費を含む)、アウトソーシング費(データ処理・電話オペレーターなど)、資料郵送費、インターンシップにかける費用など、「採用経費」に含まれる費用総額のことを指します。
また、採用コストは外部コストと内部コストの2つの分類することができます。
その構成の比率は、キャリアマートで採用支援しているクライアントを例に見ると、外部コスト7:内部コスト3という割合になっています。
内部コストと外部コスト
内部コストとは、採用コストの中で社内で消化されるもののことを指し、外部コストとは、採用コストの中で社外に対して支払うもののことを指します。
内部コストの一例
- 採用担当者に対する人件費・教育費
- 面接官などの採用担当者以外が採用に関わった際に発生する人件費
- リファラル採用へのインセンティブ
- 採用面接・選考時に発生するの交通費
- 内定者懇親会の費用
外部コストの一例
- 求人広告サイトなどの掲載費
- 人材紹介会社への紹介決定費用
- ダイレクトスカウトサービスのスカウト利用料
- 採用サイトや会社案内資料の制作費
- 就職・転職フェアの参加費
- 採用アウトソーシングや採用代行などの外注費
- 面接選考をオンラインで行った場合のツール利用費
採用コストは高騰している?推移と現状
採用コストの推移と現状を見ていきましょう。
画像引用:マイナビキャリアリサーチ企業人材ニーズ調査2021年版
2020年と2021年の採用コストについて比較したアンケートでは、新型コロナの影響もあってか「前年と採用コストは変わらない」と回答した割合が増え、「前年より採用コストが増えている」と回答した割合は10.9pt減少する結果となっています。
採用単価とは?採用コストの平均相場
新卒採用と中途採用、また新卒紹介では採用にかかる期間が異なるため、採用コストにおいても変わってきます。では1人あたりにかかる採用コスト(採用単価)はいくらほどになってくるのでしょうか。
リクルートキャリアの就職白書2020によると、1名あたりの採用単価(採用コスト)の平均費用は以下だとしています。
新卒採用 | 中途採用 | |
1人あたりの採用単価(採用コスト) | 93.6万円 | 103.3万円 |
新卒採用における採用コスト平均相場
上記の表の通り、新卒採用の一人あたりにかかる採用費用の平均額は93.6万円となっています。その前年は71.5万円だったので、約20万円ほど採用コストが増加していることになります。
ただ採用に関わる人数も異なってくるため、企業規模感によって1人あたりの採用コストは異なります。
画像引用:リクルートキャリアの就職白書2020
中途採用における採用コストの平均相場
中途採用は新卒採用に比べて約10万円高いという結果になっており、採用単価は103.3万円でした。
またマイナビの調査によると、2021年の中途採用の予算と実績を見てみると以下のようになっています。
従業員数 | 採用予算 | 採用実績 |
50人未満 | 132.5万円 | 104.2万円 |
51~299人 | 272.0万円 | 277.5万円 |
301~1000人 | 458.3万円 | 360.6万円 |
1001人以上 | 1123.6万円 | 1004.7万円 |
出典:株式会社マイナビ「マイナビ 中途採⽤状況調査2021年版」
新卒紹介における採用コスト平均相場
新卒紹介の相場も、年々上昇傾向にあります。売り手市場故、紹介会社を利用する学生層も変わりつつあり、ここ1~2年で価格が上がったように見受けられます。下記は実際にある、紹介会社の成功報酬費用です。
■A社
・文系:80万
・理系:110万
(以前は文系70万、理系90万)
■B社
・体育会系学生:90万
■C社
・文系:90万円
・理系:100万円
■D社
・一律:70万円
多額な採用予算を確保している業種
中途採用の採用コストを多く使っている業界別で見てみましょう。
上位3位
- 1位:金融・保険業・・・1006.4万円
- 2位:製造・メーカー・・・977.7万円
- 3位:IT・通信・インターネット・・・921.1万円
金融・保険業の30.8%の企業がのきなみ1000万円以上の採用コストを使用しています。
保険業界はとくに入れ替わりが激しいため、多くの予算を割いているのではないでしょうか。
採用にコストをかけていない業界
一方、医療・福祉業界の中途採用の予算平均は479.2万円と、金融・保険業の半分ほどになりました。
医療・福祉業界の人手不足は顕著ですが、金融・保険業やITのように大きな売上を確保しづらいビジネスモデルのため、採用費を確保しきれていないのではないでしょうか。
エリア別のコスト平均
エリア別に見ると、首都圏が圧倒的に多くの予算を割いています。
首都圏: 1241.1万円
対して、予算平均が低いのは次のエリアです。
中国・四国:262.6万円
関東・甲信越:374.3万円
これだけ日本の企業、採用は首都圏に集中していることが読み取れます。
採用コストの算出方法
採用コストの算出方法は、先ほどご紹介した「外部コスト+内部コスト」で計算ができます。
外部コストは、求人広告の掲載費から採用ホームページの制作費、ATSの月額利用費などを合計して計算します。内部コストは、採用にかかわった担当者の業務時間に、採用担当者の人件費を照らして算出しましょう。
また、採用コストを割り出すときに、採用単価もあわせて計算をします。
採用単価の計算方法は「採用単価 = 採用コストの総額 ÷ 採用人数」
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内部コスト「採用担当者の人件費」は計算しづらい
外部コストは、採用にまつわるサービス利用費などを指すので、毎月・毎年いくら使っているか計算がしやすいですが、内部コストは採用担当者の人件費がメインになるので外部コストに比べて把握が難しくなります。
内部コスト算出の手段として、採用担当者の給料(年収)を把握するという手があります。
マイナビAGENTによると人事職の平均年収は478万円となっています。
しかし、会社が負担する金額は年収とイコールではなく、一般的に、給与×130~150%が実質の負担金額となるため実際は478万×140 %=約670万円のコストがかかっていることになります。
採用担当者が採用以外の業務に従事している場合は、採用業務に費やした時間数を割り出して、時給換算しておくことをおすすめします。
採用コストを削減するための見直し方
採用コストを見直したい場合は、まず現時点での採用コストを正確に計算するのが大切です。とくに、中小企業では総務担当や社長が、片手間で採用業務を行っているケースがあります。
また、現場の部長や課長などに面接だけをお願いするケースもあるため、「誰が何時間、採用業務に対応したか」が明確でない企業が多いでしょう。
採用コスト削減の手法・具体的な施策例8つ
ここからは、より具体的な採用コスト削減手法を7つご紹介します。
内定辞退・早期離職対策(ミスマッチ防止)
採用コストを考えるとき、多くの人が母集団形成にかかわるコスト削減に目がいってしまいがちです。しかし内定辞退や早期離職が多いと、せっかく集めた人材をまたゼロベースで募集しなければならず、採用コストが倍増します。
もし内定辞退や定着部分に懸念点があるのであれば、一度新規の募集をストップして、内定辞退対策などを行ったほうが良いでしょう。
掲載の求人広告を見直す
採用コストの削減のためには、求人広告を見直すのも重要ポイントです。求人広告はシーズンによってキャンペーンや特別値引きが適用され、費用が上下しやすいです。
また、基本的には数十万円~百万円単位で大きな金額が動くため、あれこれ手を広げて適当に掲載するとコスト増につながります。広告媒体ごとに費用対効果を算出し、冷静に見直すことをおすすめします。
選考フローを見直す
選考フローを見直して、採用担当者の無駄な業務を削ることも採用コスト削減に直結します。
たとえば、無駄に面接回数が多かったり、毎回候補者に来社いただいて面接をしていたりすると、どうしても時間がかかって内部コストが膨らみます。最初の会社説明会はオンラインで複数名まとめて実施する、面接回数を極力減らすなど、工夫をほどこしてみましょう。
SNSを活用する(ソーシャルリクルーティング)
SNSを活用して、自力の集客スキルを強化するのも採用コスト削減につながります。
求人広告や、人材紹介のように大きな費用がかからないため、SNS活用は必須といえます。ただし、SNSのフォロワーが増えてエンゲージメントが高まるまでに一定のマンパワーがかかるため、やみくもに手をつけるのは避けた方がいいでしょう。
リファラル採用を行う(社員紹介)
リファラル採用を強化できれば、採用コストの外部コスト削減につながります。社員に紹介してもらいやすいように、紹介カードをつくったり、紹介してくれた社員にインセンティブを渡すなど検討してみましょう。
ただし、インセンティブの金額をつりあげてリファラル促進をすると、けっきょく内部コストが膨らんでしまい本末転倒です。社員が紹介してくれる会社にするために、従業員エンゲージメントを高めるなど、社内の見直しが必須といえます。
内部コストを見直す
「人材紹介を使わない」など、外部コストは明確に削減しやすい一方、内部コストは意識をしなければ削減が難しいものです。
先ほどお伝えした通り、まずは採用にかかわる人を洗い出し、どんな業務に、誰が何時間費やしているのか可視化するといいでしょう。
採用HP(自社サイト)の運用を強化する
外部コストを減らすためには、自社の採用HP経由での応募を集める工夫が必要です。自社サイトから集客ができれば、求人広告費や就活イベントの出展費、紹介費用を大幅に削減できます。
採用HPがない企業は、まずは無料の採用HPビルダーを試してみるのはいかがでしょうか。
採用代行を導入する(業務委託・外注)
採用コストの削減のために、思い切って採用業務を代行者に依頼する方法もあります。社内に採用の専任がいない、ノウハウがたまっていないのであれば、プロに外注する方がスムーズです。
採用代行のメリットは以下の通りです。
- 採用担当が不在でも質の高い採用業務を行える
- コア業務に集中できる
- 採用コストを削減できる など
代行といっても、採用すべてを外注する必要はありません。コア業務(面接やオファー面談の実施など)のみを自社で行って、ノンコア業務(日程調整やスカウト作業、会社説明会会場のセッティングなど)を代行会社に依頼する方法もあります。もちろん、コア業務を採用代行に依頼しても問題ありません。
なお、採用代行(RPO)導入費用は、月額20万円~30万円ほどが相場です。
新卒採用を依頼するのか、中途採用で依頼するのか、スポットで頼むのか…。採用代行サービス会社によってもそれぞれサービス内容が異なってきますので、依頼する前にしっかりと比較検討することをお勧めします!
このようなお悩みをお持ちの方におすすめの記事です。 採用活動がうまくいっていない 採用業務を外注に依頼したい 採用アウトソーシングを導入したいが費用相場がわからない 本記事では、「採用代行(RPO)・採用アウトソ[…]
採用コスト削減の成功事例
採用コストの成功事例として、当社クライアントの事例を紹介します。こちらのクライアントは、実に1,200万円ものコスト削減に成功しました。しかし、対策・改善した点はたったの3つです。
- エージェントの紹介フィー
- 求人広告費
- 求職者対応/選考・面談対応
キャリアマート無料ノウハウセミナー(2020年10月14日)より
実際に、どのような対策を実施したのか細かく見ていきましょう。
エージェントの紹介フィー
人材要件の見直し
難易度を低くし、資料化(求人票)で社内展開しやすくする。
業者再選定
全国のエージェントデータベース保有企業へ選定を依頼する。
紹介フィーの見直し
未経験OKの職種は紹介フィーを見直しする。(例:理論年収×○○%⇒一律80万円)
求人広告費
発注ロットの見直し
掲載の都度発注していた求人媒体をチケット購入に変更する。
利用媒体の変更
人材要件の見直しに伴い、ターゲット像に近い登録者が集まっている媒体に変更する。
求職者対応/選考・面談対応
業務対応者の変更
下記のような業務(ノンコア業務)を採用アウトソーシング・採用代行(RPO)会社に委託する。
- 日程調整/合否連絡
- Web面接URL作成・送付
- 適正受験連絡・結果PDFの格納
- エージェントへの推薦促進連絡
- 書類選考の1次スクリーニング(RPA自動化)
まとめ
今回は採用コストの内部コスト、外部コストの内訳や、採用コストの平均額、コスト削減方法をお伝えしました。
ご紹介した削減ポイントを意識しながら、ぜひ自社の採用コストの見直しを進めてみて下さい。
企業によって求める人材は変わってきます。時間とコストがかかる採用活動を、効率よく行うために重要なのが採用戦略です。 採用戦略の立て方は企業ごとに異なりますが、しっかり戦略を立てることで、応募が来ない状況や内定辞退・早期離職を予防するこ[…]