「リクナビ離れ」に見る これからの就活サイトの活用方法

「リクナビ離れ」に見る これからの就活サイトの活用方法

長らく、日本の新卒採用・就職市場をけん引してきた「就活サイト」。しかしここ数年、この定説を覆す異変が起きています。その代表的な現象の一つが、大手就活サイト「リクナビ」の利用率低下が目立つようになったことと言われています。

就活サイト市場が大きな変化の時にある今、学生と企業それぞれの立場から、異変の背景とこれからの活用の仕方を検討します。

「リクナビ離れ」は本当だった?

「内定辞退率予測データの開示」が変えたモノ

2019年、リクルートキャリアが運営する就職ナビ「リクナビ」の閲覧履歴に基づく内定辞退率予測データの提供問題は、就活市場に大きな波紋を投げかけました。この事件で、提供を受けた契約企業37社にも、職業安定法違反であるとして、東京労働局などを通じて行政指導を行う事態になったのは記憶に新しいところです。

この問題が表面化した際、中央大学をはじめ複数の大学が、リクルートキャリアへのガイダンス講師依頼を取りやめ、学生にリクナビを紹介しないなど、大学のキャリアセンターがいち早く動いたことなどから、「リクナビ」一辺倒だった大学、企業側の意識が変わったと言われています。

2020‐2021年の新卒サイトの利用状況

HRog運営会社のゴーリストが収集しているデータをもとに、20年卒採用から21年卒採用にかけて、3大ナビサイトの利用状況がどのように変化しているかを調査した結果、大きな特徴として、3つのことが挙げられます。

  • リクナビが掲載社数前年比割れをしている一方で、マイナビ・キャリタスは堅調。
  • マイナビがリクナビに掲載社数で逆転。
  • 「媒体ユニーク」に着目した際、掲載社数は-2,715社・前年比94%で、ナビサイト自体を利用する企業は減少傾向。

これらの結果から、リクナビ離れはもちろん、そもそも、学生が利用するツールが変化しつつあることが見てとれます。

変わる学生の意識

3割近い学生が「リクナビを利用しない」という現実

学生の、就活サイトへの意識の変化をもう少し掘り下げてみましょう。

HR総研で、11月上旬に就活クチコミサイト「就活会議」と共同で実施した、2021年卒業予定の就活生を対象とした「就職活動とインターンシップに関する意識調査」。この中で、「リクナビ」の利用意向についても聞いていますが、「(すでに利用していたが)利用を控える」という就活生が17%、「利用予定だったが控える」が3%、「利用予定なし」が8%となっており、合わせて3割近い就活生は「利用しない」としています。もともと利用するつもりはない1割を除いても、約2割の学生は、2019年の問題以降、「リクナビ」離れを起こしたことが顕著にわかります。

“2強時代”から、個別・個性で選ぶ時代へ

就活サイトでいわゆる2強といえば、「マイナビ」「リクナビ」ですが、最近はその2社の関係にも変化が生まれています。HR総研2019年の調査では、たとえば、文系では2020年卒(38%)→2021年卒(48%)、理系で2020年卒(29%)→2021年卒(38%)とそれぞれで約10ポイントの上昇している一方で、「リクナビ」は、文系では27%から13%、理系は38%から20%と10ポイント以上低下。文系理系とも、リクナビよりマイナビ、という傾向が顕著になっています。

また、新興サービスでは、「ONE CAREER」「就活会議」「外資就活ドットコム」は、「リクナビ」や「マイナビ」を補完する口コミサイトとして、「OfferBox」「iroots」は逆求人型サイトとして機能し注目を集めています。ここ数年、特にこの補完サイトは主流のサービスへと成長しています。

大手就活サイトだけではない、これからの就活

新興サイトが支持される理由

新興サイトが支持されるようになった理由の1つは、「就職スケジュールの二分化」があります。実質的な就活は夏のインターンシップに始まりますが、この時点のエントリーには大手就活サイトが活用されます。一方、就活のもう一つのヤマ場は3月。企業セミナー後すぐに選考を始める企業が多くあり、この時期は口コミサイトが有用です。

もう1つの理由は、就活にスマートフォンが一般的に使われる形態になったことでしょう。ここ数年の大学生は、1990年代末生まれのいわゆる、「ジェネーレーションZ世代」です。Z世代の大きな特徴は、「デジタルネイティブ」で、そういったツールとサービスの親和性にいち早く対応した媒体が、今新しい世代に選ばれているのです。

自分に合ったツールを、目的に応じて選ぶのがこれから流

もともと学生は特定の就職情報サイトだけではありません。ちなみに、ある調査では、就職活動を終えた学生のサイト登録数の平均は3.62社となっており、複数のツール・メディアを効果的に使っていることがわかります。最近の就職情報サイトも、外資系やベンチャー企業に特化したものや、スカウト機能があるなど、多様化が進んでいます。

また、これから就活する学生に就職情報サイト以外に利用する媒体を調査したところ、最も多かったのは、「企業の採用HP」(70.8%)で、次いで、「インターンシップ・会社見学」(47.8%)、「大学のキャリアセンターや就職課」(39.4%)となっています。便利なウェブサイトだけでなく、企業事情に精通した大学担当者から直接情報を得ることに信頼を置く傾向が見て取れます。

採用の視点をいかに新しくできるか?

近年、企業側も、専門の就活サイトではなく、インターンや社員の紹介・推薦によるリファラル採用を導入し、それぞれの目的に応じた採用手法を進めるところが増加しています。とはいえ、まだまだ今までのような、就活サイトを基軸とする一括採用、が主流であることは変わりません。

大事なことは、今自社で行っている手法が、本当に最適なのか、新しい媒体やツールを用いてよりよい採用にできないかを考えることです。多角的な視点で個人を見る、という部分にいかに注力していけるかが、これからの企業には問われているのです。

結論・まとめ

学生も企業も、より一層、リアルな接触を重視する方向に向かっています。「リクナビ問題」は、単に一企業の問題ということではなく、就職・採用の在り方自体に疑問を呈し、広く就活の在り方を問い直す、機会の一つと言えるのです。

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