社内でDX推進が決定したものの、
- 「そもそも自分自身がDXに関する理解が不足している」
- 「社内にITやテクノロジー分野に長けた人材が見当たらない」
- 「DX人材の採用活動を行っているが、難易度が高い」
など、頭を悩ませている人事担当者の方は少なくありません。
そこで今回は、DX人材に関する基礎的な知識をはじめ、必要なスキルや役割などについてご紹介します。DX人材を確保するための採用方法、DX人材を社内で育成する方法にも触れますので、参考にしてみてください。
DX人材とは
はじめに、「DX人材」の定義を見ていきましょう。DXとは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を指しており、定義は「データやデジタル技術を活用し、業務プロセスやサービスを変革、組織や企業の改善や向上を図り、自社の競争優位性を確立すること」です。
単純にITを導入することやデジタル化を指すものではなく、デジタル技術の活用により、ビジネスモデルの変革を実現することがDXの目的になります。
「DX人材」の統一された定義はありません。
しかし、2020年12月、経済産業省から公開された「DXレポート2」によると「自社のビジネスをよく理解した上で、データとデジタル技術を活用し、どう改革していくのか構想力をもち、実現するためのビジョンを描くことができる人材」とされています。
DX人材の必要性
DX人材の必要性が高まった背景には、「2025年の崖」といわれる日本のデジタル化における問題があります。
「2025年の崖」とは、企業においてシステムの刷新による経営改革が行われない場合、最新技術を柔軟に取り入れられずに、2025年以降には最大12兆円もの大きな経済損失が発生する」といった問題です。
2018年、経済産業省からこれらの問題が指摘されたことにより、日本においてもDXへの取り組みが加速されました。
また、新型コロナウイルス感染拡大もDX人材の必要性が高まった理由のひとつでしょう。リモートワークの導入など、企業の働き方に大きな変化が見られ、DX推進が加速されました。
2021年には政府がデジタル社会形成の司令塔となる「デジタル庁」を発足させ、マイナンバーカードの普及やキャッシュレス化などさまざまな政策が進められています。そんななか、DX人材の需要は急激に高まり、さまざまな企業においてDX人材の積極的な採用が広がっていきました。
DX人材不足の現状
しかし、需要に対して、DX人材の供給は追いついていない現状で人材不足が課題となっています。
IPA独立行政法人情報処理推進機構から公開された「DX白書2023」によると、日本では2022年度の調査で「DXを推進する人材が、大幅に不足している」と答えた企業は、全体の約半数を占める49.6%となりました。
DX人材の採用や育成は、多くの企業にとって急務となっているのです。
DX人材に必要なスキル・能力
DX人材に必要なスキルや能力は多岐にわたります。ここでは、大きく3つに分けて解説しましょう。
DXを実現しようとする姿勢
DX人材には、DXを実現しようとする姿勢が求められます。例えば、これまでの知識や経験、やり方に固執せず、既存システムを新しいものへ刷新し、環境構築を変化させる判断なども必要になるでしょう。
組織や企業の改善や向上のために「現状を変えたい」という意志を持ち、挑戦する行動力があることが、DX人材にとって必要なマインドです。
データや先端技術に関する知識
データや最新技術に関する知識を有していることは、DX人材にとって必要不可欠な要素となります。システム・ネットワークの基本的な仕組み、ITやデジタル技術に関する基礎的な知識を理解できていないと、改善策や新たな案が見いだせないでしょう。
また、基礎的な知識のみならず、データ分析などの専門性の高い知見や先端技術に関する知識も必要になるでしょう。特に、統計学やプログラミング言語を活用するデータ分析など、データサイエンス領域の知見も必要とされています。
先進的な技術としては、AIやクラウドについての知識も求められます。IT技術は日々進化しているため、先端技術やトレンド情報を取り入れ続けていく姿勢も求められるでしょう。
IT分野に関する技術力とプロジェクトマネジメント力
デジタル分野はとても進歩が速いため、情報の理解や技術力の習得は必須です。自社に適したITツールを、社内システムに導入できるスキルが重要になります。
そしてITスキルだけでなく、さまざまなプロジェクトを成功させるためのマネジメント力やリーダーシップ力も求められます。
DXを実現するまでには、試行錯誤の連続です。そのなかでも、納期や予算、必要人員を管理し、円滑なコミュニケーションを心がけながら周囲を巻き込む力が必要とされるでしょう。
DX人材が求められる職種と役割
ここからは、DX人材が求められる職種とその役割をご紹介します。
プロダクトマネジャー
DX推進、デジタルビジネスを実現させるためにリーダーとして、組織をけん引する役割のことです。具体的には、ビジネス戦略の策定、構築したシステムやサービスの活用、プログラムの再構築、予算管理など、組織課題の解決や目標実現に向けてチームをリードします。
システム開発に関わるエンジニアをまとめる役割を担うため、IT領域における深い知見と技術を持ち合わせていることが必要です。
ビジネスデザイナー
市場動向やクライアントのニーズから、具体的な企画などDXのアイデアを出して企画立案、計画達成に向けて進行する役割のことです。現場で働くエンジニアとプロダクトマネジャーとの間に入って、円滑にプロジェクトが進められるように調整を行います。
プロジェクトを進める上でトラブルが発生することもあるため、折衝能力やファシリテーション能力が求められます。
データサイエンティスト
社内外から集められた膨大なデータの分析や解析を行い、それらのデータをビジネスに生かす方策を構想する役割のことです。DXに関する、AI、IoTなどのデジタル技術のみならず、データ分析のためのソフトウェアや数学、プログラミングなどの技術的なスキルや知識も求められます。
また、プロジェクトを進めていくためには、自社やビジネスについての理解も必要です。
先端技術エンジニア
機械学習、AI(人工知能)、ブロックチェーンなどの先進的な技術を用いて、システム開発を行う役割のことです。最新技術は移り変わりが激しいため、常に最新の情報をキャッチアップし、事業に取り入れていく姿勢が求められます。
最先端技術に対する理解やそれらを活用したDXを取り入れるスキルが必要になります。
エンジニア/プログラマ
システムの実装、インフラ構築や保守などを行う役割のことです。DXを実現するためのサービス開発、インフラ整備、既存システムのメンテナンスなど幅広い業務を担っています。
DXに必要となるシステム開発能力のみならず、コーディングスキルやプロジェクトの管理調整能力などの設計マネジメントまで、幅広い対応が求められます。
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UI/UXデザイナー
DX、システムにおいて、ユーザー向けデザインを制作する役割のことです。サービスの利用率や満足度を高めるに、ユーザー体験の向上を行います。
例えば、レイアウトやボタンなどがわかりやすく使いやすいデザインであるかなど、ユーザーを基点とした画面設計などに取り組みます。そのため、システムデザインについてのスキル習得や情報収集能力が求められるでしょう。
デザイナー採用のコツやおすすめの採用手法について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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DX人材を確保するには?
上記で紹介してきたDX人材をどのように確保すれば良いのでしょうか。DX人材を確保する方法を4つご紹介します。
DX人材を中途採用する
即戦力となるDX人材を求めるのであれば、中途採用を検討してみましょう。しかし、DX人材は需要が高いため、採用活動が非常に難しくなることが予想されます。
そのためには、能動的な採用活動を進めることが必要です。例えば、企業が求職者側に直接アプローチできる「ダイレクトリクルーティング」を活用するのも良いでしょう。
ただ応募や紹介が来るのを待つだけではなく、攻めの採用として多くの企業で取り入れている採用手段のひとつです。
社内でDX人材を育成する
DX人材は中途採用するだけでなく、社内からDX人材となる従業員を育成する方法も有効です。
自社のシステムや社内体制をよく理解した方がDX人材になるため、一貫性のあるシステムを作り上げることができたり、各部署間の調整などもスムーズに進められたりするメリットがあります。
社内のDX人材育成には、学習などリスキリングに少々時間がかかりますが、自社に適したDXを推進できる人材を確保できるでしょう。
フリーランスのDX人材を活用する
一刻も早く解決したいDXの課題や、社内でDX人材を育成する時間がない場合には、フリーランスなどの外部人材を活用するのがおすすめです。
中途採用と比べると競争率は激しくないですが「どのような業務を任せるのか」業務委託の範囲をしっかりと整備してから、依頼するように気をつけましょう。
外部のコンサルタントと協業を行う
DX推進における高度なスキルが求められる場合や社内にITの知見がない時には、外部のコンサルタントに協業をお願いするのもひとつの手です。
外部のコンサルタントを依頼する際には「改革経験など、どのような実績があるのか」「再現性は高いのか」を見極めて選択しましょう。
コンサルタントとアドバイザリー契約を締結するだけでも、第三者の視点からさまざまな課題が見えてきたり、的確な助言をしてもらえたりするなど、DXが大きく推進される可能性があります。
DX人材の育て方 3ステップ
ここからは社内のDX人材の育て方、3ステップをご紹介します。
DX人材のスキルマップを作る
まずは、自社に必要となるDX人材のスキルマップを作ってみましょう。スキルマップを作ることで「どのような人材、どのようなスキルが必要か」を明確にできます。
社内で共有しやすいようにカテゴリー分けして作成するのがおすすめです。社内全体でスキルマップが共有できれば、DX人材の候補者のスキル把握ができるだけでなく、他部署から育成サポートを受けられるなどのメリットもあります。
学習とマインドセット
DX人材を育てるためには、マインドセットと学習の両方が必要になります。DX人材を育成するためには、デジタル技術やITについての基礎的な知識を座学で身につけることは必須です。
他にも「DX検定」や「DX推進アドバイザー認定試験」などの検定や資格試験もあるので、知識を習得するため、受験させるのも良いでしょう。
一方、DX人材は知識やスキルだけでなく、DX推進における変革のためのマインドセットを行うことも重要です。プロジェクトを成功させるために挑戦し続ける姿勢、周囲を巻き込む力など、変革を起こすのに必要となる考え方や行動を身につけていきます。
OJTなど実践
ある程度の知識とスキルが備わったら、次は実践に移りましょう。座学で学んだ内容を実践することで、実行力を身につけていきます。そのためには、社内でOJT担当を立て、計画的なOJTを実施して経験を積めるようにしましょう。
また、DX人材が常にスキルを磨き続けられるように、社外のネットワーク構築をサポートしていきます。最新のITに関する知識や情報を得られる環境を整備していきましょう。
まとめ
今回は、DX人材に必要なスキルや能力、DX人材を確保する方法などについてお伝えしました。企業のDX推進を実現するために必要な存在である「DX人材」。多くの企業がDX人材の採用や育成に頭を悩ませている状況です。
自社の課題解決やDXを推進させるためには「どのような知識やスキルを持った人材が必要なのか」明確化してから、中途採用や社内人材の育成に取り組むことが必要となります。
常に新たな知見や情報が更新されていく、IT・テクノロジー分野のDX推進に終わりはありません。企業のDX推進を継続させていくために、自社にフィットした採用手段や育成方法を選んでいきましょう。
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