人事担当の皆さんも、かつて就職活動をしていたときに、応募した会社で圧迫面接を体験したことや「〇〇という会社の面接は圧迫面接だった」という話題を耳にした経験はありませんか?
圧迫面接と聞いていい思い出が浮かぶ人はあまりいないと思います。しかし、なぜあえて圧迫面接を行うのでしょうか。
今回は企業が圧迫面接を行う目的と圧迫面接を行う上でのリスクを整理していきます。また、面接官が行っている「無意識の圧迫面接」についてみていきましょう。
圧迫面接とは
圧迫面接とは、答えにくい意地悪な質問をしたり、話を聞いていないような態度をとったりする面接手法です。
応募者のストレス耐性を見極めるために、アメリカの企業が考案した面接の手法で、外国では「stress interview」と呼ばれています。
圧迫面接を実施する目的
圧迫面接は応募者にストレス耐性をはかるために有効ですが、やり方を間違えると企業イメージを大きく落としてしまいます。
リスクをとってもなぜ企業は圧迫面接を行うのでしょうか。
就活生の本音を知りたい
志望動機や自己PRなど、面接で定番の質問に対して念入りに準備をしてから面接に臨む人が多いと思います。
特に新卒採用の場合はキャリアセンターなどで模擬練習をしたり、面接の質問や回答事例がインターネットで簡単に入手できるため、作られた答えになってしまいがちです。
そのため、想定していなかった質問で意表をつき、就活生の本音を聞き出す目的で圧迫面接を行うケースがあります。
ストレス耐性があるのか見極めたい
メンタル不調で休職する人や会社を去ってしまう人が年々増加し、ストレス耐性のある人を採用したいと考える企業が増えています。
そのため面接のときにあえて答えに困る質問を投げかけ、威圧的な態度をとることで「応募者がストレス耐性を持っているか?」を確認するのです。
考える力やコミュニケーション能力があるのか確認したい
社会に出て仕事をすると、お客さんや取引先と関わっていく中で想定していなかった出来事に遭遇することがあります。
そんなとき冷静に対応するには自分自身で考え、上司や周囲としっかりコミュニケーションをとらなければなりません。
嫌な相手にも逃げず、考える力やコミュニケーション能力があるか、面接時の反応で見極めるために圧迫面接を行います。
訴訟のおそれ!?圧迫面接のデメリット
圧迫面接では意図的に相手に意地悪な質問をするので、当然、面接を受けている応募者は嫌な気持ちになります。
怒りを感じる人や仕返しをしようと考える人も少なくありません。
Wikipediaによると、考案されたアメリカだけでなく日本でも圧迫面接を受けた応募者から提訴された例が存在するそうです。そのため、圧迫面接には大きなデメリットがあると面接官は理解しておく必要があります。
録音が証拠に!人格を否定する発言はNG
圧迫面接そのものは法律で禁止されていません。しかし、面接官が業務に無関係なことで相手の人格を否定するような発言をした場合、精神的苦痛を受けたとして損害賠償請求訴訟を起こされる可能性があります。
圧迫面接により精神的苦痛を負った場合、会社から精神的苦痛を受けたと証明できれば、慰謝料請求は可能です。
面接を録音する行為自体は違法ではないため、面接時の録音を禁止している会社で応募者が録音した場合であっても、その録音自体は証拠として使うことができます。
応募者に辞退されてしまう
圧迫面接をするような会社には行きたくないと考える応募者も一定数存在します。
Re就活が2016年に400人を対象に「面接で志望度が下がる瞬間」について調査し、「面接官の態度・話を聞く姿勢が悪かったとき」と回答した人が最も多いという結果が出ています。
よい人材を採用したいと考えていても、圧迫面接により志望度が下がり選考を辞退されてしまっては元も子もありません。
会社のイメージダウンになる
圧迫面接をする会社はブラック企業であると多くの就活生は考えています。
2019年に就活生を対象にした株式会社DISCOの調査で、「ブラック企業を疑った企業の態度や様子」という質問に対し、38%の学生が圧迫面接と答えたのです。
また、株式会社プレシャスパートナーズが23卒学生に行ったアンケートによると、37.6%の学生が「面接で面接官や人事の態度が悪く、企業イメージが悪くなった」と回答しています。
圧迫面接だと思われてしまい「あの会社はブラックだ」「印象悪かった」とSNSや口コミサイトなどで書き込まれてしまえば、もう取返しはつきません。会社のイメージダウンにつながってしまうことは避けられないでしょう。
こんな態度は「圧迫面接」と捉えられがち!NG例
圧迫面接をしているつもりはなくても、応募者は圧迫面接をされたと感じる場合があります。そのほとんどは面接官の無意識にとっている態度が原因です。
どのような態度が応募者に「圧迫面接」という印象を与えてしまうのでしょうか。
面接官の表情・目線
目線が合わなかったり、相手が無表情だったりすると「面接官に威圧的な態度を取られた」と受け取る応募者は少なくありません。
相手と目線を合わせずに話をしたり、話を聞いたりすることは、真剣に話の内容を聞いていないと相手に受け取られてしまう可能性があります。
面接官の姿勢
初対面の人に会ったとき、腕や足を組んでふん反りかえって座る人はいないと思います。しかし、面接をする立場になると、応募者よりも立場が上と考えてしまう面接官が少なからずいるようです。
圧迫面接と誤解されることがないように、応募者と対峙する際は気配りやマナーを守りお互いが気持ちのいい面接になるよう心がけてください。
面接官の声
大きな声、または抑揚のない調子で話す面接官に対して、悪い印象を持ち、圧迫面接をされたと受け取られてしまうケースがあります。
面接官からすれば無自覚なのかもしれませんが、緊張している応募者は興味を持ってくれていないと感じてしまう可能性があるでしょう。抑揚や声の大きさには気を配り面接といえど、相手に気を配ることを忘れないでください。
自分の意見を否定された
応募者の回答に対して否定ばかりする面接官は、圧迫面接をしていると思われてしまう危険性が高いです。
面接はそもそも面接官の考えを主張する場ではなく、面接官の持っている考えが正しいわけでもありません。否定された相手がどう受けとるか、面接はどういう場であるかを面接官は理解しておく必要があります。
「なぜ」ばかり繰り返す
応募者が答えたことに対し、なぜ?なんで?とばかり投げかけていませんか?
面接官は回答の根拠を知りたいだけかもしれませんが、「なぜ」ばかりを繰り返していると相手は詰問されていると感じ、圧迫面接をされたと誤解してもおかしくありません。
面接官はすぐに「なぜ?」と返すのではなく、「〇〇をしたきっかけを教えてもらえますか?」など、質問のバリエーションを増やすことで圧迫面接をされたと応募者に受け取られるリスクを減らすことができるでしょう。
圧迫面接以外で学生のストレス耐性を見極める方法
圧迫面接はストレス耐性を見極める目的で考案されましたが、企業イメージがダウンするリスクや応募者にも精神的な負担を与えてしまうため、おすすめの方法とは言えません。
ストレス耐性を見極めたい場合は、圧迫面接以外の手法を使ってみるとよいでしょう。
適性検査
書類選考や面接ではわからない応募者の内面を数値化することができ、面接官の主観ではなく客観的な資料として非常に有効なのが適性検査です。
最近の適性検査には、ストレス耐性のみを測るものも登場しています。ストレス耐性に特化しているものでなくてもストレス耐性が基本項目に入っているものもあるので、適性検査の利用はストレス耐性を見極める上でおすすめの手法です。
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面接の質問項目に盛り込む
一番大きな挫折やトラブルが起きたときに「どういう対応をしたか?」をたずねることで、処理能力や思考力が見えてきます。処理能力はストレス耐性を決定づける要因の1つとされています。
また、「どういったときに眠れなくなるか?」を聞くことにより応募者がどのようなときにストレスを感じるか見えてくるケースもあります。
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まとめ
圧迫面接はデメリットが大きく、現在では見直されている面接の手法です。
応募者を不快にさせなくても、適性検査などストレス耐性を測る方法は他にもあります。訴えられるリスクや選考辞退を招く恐れがある面接手法をあえて選択する必要はないでしょう。
無意識に圧迫面接を行っていないか他の面接官に聞いてみるなどして、早急に改善することをおすすめします。
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