「社内失業」や「社内失業者」というワードを耳にしたことがあるでしょうか?
近頃では、大手企業で社内失業をする人が増えていると報じられており、日本国内には社内失業者が400万人程度いると言われています。
今回は、社内失業の実態や発生してしまう原因、発生しやすい企業の特徴、未然に防ぐ対策などについて詳しく解説していきます。
社内失業とは
社内失業とは、正社員として会社に在籍しているにも関わらず、仕事がない状態のことを指します。
「窓際族」や「社内ニート」も社内失業と同じ意味を持っており、このような状態である社員のことを「社内失業者」と呼びます。また、「出勤時にはいるのに、いつの間にか気が付くといなくなっている…」というそんな姿の存在感の無さを揶揄して、”妖精さん”と名付けられていたりもしています。
「会社に行っているのに仕事がない状態ってどういうこと?」と驚く人もいるかと思いますが、社内失業者は会社にいても仕事がないため、社内で時間を持て余しているのです。2008年のリーマンショック以降に、悪化したと考えられている問題のひとつです。
社内失業の実態と増加の背景
エン・ジャパン株式会社が運営する「人事のミカタ」の社内失業実態調査によると、「社内失業の状態にある社員は現在いますか?」という質問に対し、全体の9%が「いる」と回答し、「いる可能性がある」も20%となっています。
社内失業が生じてしまう背景には、年功序列と終身雇用制度が関係しています。日本では労働契約法や労働基準法が定められており、従業員の立場が守られているため、企業自らの理由で簡単に社員を解雇することができないのです。
そのため、成果を出さない社員でも一度雇った以上、半永久的に雇用しなければならないのです。また、日本の企業は年功序列の文化が根強く染み付いています。
そのような企業の場合は、社員の実力の有無やスキルを問わず、年齢を重ねると昇進・昇給するのです。その結果、実績を残さなくても高賃金を得られるので、成長を目指さず現状維持の社員が一定数存在してしまいます。
どんな年代に多いのか
社内失業者は特に経験豊富な中高年層に多くみられます。
画像参考:エン・ジャパン
勤続年数が増加すると共に能力も蓄積されると考えられていた年功序列の文化とは違い、現在は常に新しいスキルを身につけていかなければ、居場所がなくなってしまうのです。
急激に市場環境が変化したことにより、部下がいない「部下なし管理職」が増加しています。
最も社内失業者が多い年齢は50代となっており、続いて40代の一般社員が多いのです。しかし、最近では30代の社内失業者が増加傾向で、今後は20代・30代を中心に多くみられるなど、深刻な問題となっています。
なぜ、社内失業が起こる?原因は
社内失業が起こる原因は社員側だけではなく、企業側にもあるのです。社員側と企業側の原因について詳しくみていきましょう。
社員側の原因
まずは雇用される社員側の原因を解説していきます。
スキル不足
さまざまなテクノロジーが発達している現在では、ビジネスシーンで求められる個人のスキルはどんどん変化してきています。「仕事の処理能力が際立って遅い人」「ミスが多い人」に仕事を割り振っても、手間が増えてしまうので「この人に仕事は任せられない」と、自然とスキル不足の社員は社内失業者になってしまうことが多いのです。
報告・連絡などの意思疎通不足
細かい報告・連絡・相談をしないため、仕事がないことが周りに気づいてもらえず、自分からも言い出すタイミングを逃してしまうなど悪循環に陥り、仕事がない状態となってしまうのです。また、周囲とのコミュニケーション不足で社内全体の雰囲気を察知できず、自分がすべき行動がわからなくなってしまうことも社内失業の原因へとつながってしまいます。
企業側の原因
企業側の原因をみていきましょう。
管理不足・配属ミス
意欲がある社員ばかりであれば問題はないのですが、組織が大きくなりすぎて監視の目が届きにくく、自発的に行動できない人は野放し状態となってしまうのです。また、能力が明らかに見合っていない部署に配属してしまうことで、任せる仕事がない場合も社内失業者を増やす原因となってしまいます。
教育制度が不十分
十分な教育制度が確立されておらず、スキルや知識を身につける機会を提供できていないことも、社内失業者を生み出す原因となってしまうのです。上司が部下をサポートする習慣がなく、教育者不足により「仕事ができない」社員が増えてしまい、社内失業が起こってしまいます。
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社内失業によって発生する問題
社内失業によってどんな問題が発生するのか、紹介していきます。
周囲のモチベーションが低下する
社内失業者は「会社に必要とされていない」と思っている人が多く、その考え方が周囲の社員に影響してしまうことがあります。だらだらと業務を行っていても給料がもらえる状態の社内失業者が存在していると、「あれで給料がもらえるなら自分も…」と、周囲の社員のモチベーションが低下していきます。
業務の効率が悪くなる
社内失業者に該当してしまう人は、業務に対するスキルが低いことが多いのです。仕事を任せられないことを理由に解雇することはできないため、面倒なことを避けるために放置してしまいます。その結果、仕事をだらだらと行い効率が悪くなってしまうのです。
業績が低下する
モチベーションが低下するといった精神面、業務効率の悪化といった物理面の2つの要因が業績低下を招いてしまいます。社内失業者の対処法が見つからず、放置したままにしてしまうと次から次へと問題が起こってしまい、個人だけではなく会社にも悪影響を与えてしまうのです。
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社内失業が発生しやすい企業の特徴
全ての企業で社内失業を出してしまう可能性はあるのですが、特に社内失業が発生しやすい企業の特徴について紹介していきます。
大手?or 中小?
最も多く社内失業が起こりやすいのは、「大手企業」です。
画像引用:エン・ジャパン
特に大手企業では、社員数が圧倒的に多いので社内失業者の割合が必然的に高くなってしまいます。
社員が多いことで、「この人には任せられないから違う人に任せよう」といった考え方が多くなってしまうのです。その結果、中小企業や個人事業など比較的社員数が少ない企業の方が、社内失業率が低くなる傾向にあります。
どういう部署に多い?
経営企画や事務職などの部署に、社内失業者の割合が高くなっています。
画像参考:エン・ジャパン
理由としては、作業効率を高めるためにアウトソーシングやシステム導入を行うことにより、社員の仕事量が減少したことが挙げられます。仕事を覚えるために若手社員に任せていた簡単な作業は、システムや外注が行うことで社員のスキルアップの機会が減り、それが原因で社内失業になる社員が増加してしまうのです。
社内失業者が出てしまった場合の対処法
社内失業者が出てしまった場合にできる対処法をみていきましょう。
関係者へヒアリングを行う
まず社内失業者が出てしまった場合には、原因を把握することが重要です。
社内失業者となってしまった人と仕事で関わった人に対してヒアリングを行い、原因を追求しましょう。ポイントとなるのは、できるだけ多くのポジションの人にヒアリングを行うことです。社内失業者の上司だけというように、特定の人にしかヒアリングを行わないと、収集した情報に偏りが出てしまい、正しい原因に結び付かなくなってしまいます。
社内失業者の異動・配転を行う
社内失業が起こった場合には、ポジションや部署などを変更することも有効です。
社内失業者だけの原因とは限らないため、労働環境を一変することで能力を開花させたり、モチベーションを沸かせたりできる可能性もあります。
社内失業者への教育・育成を行う
社内失業者をスキル不足と切り捨てる前に、企業側でできる限り教育と指導を行い、改善する機会を与える必要があります。社内失業者が再び復帰できるように企業側の教育・指導体制が整っているか、再度見直すことも重要です。
社内失業者を未然に防ぐ対策
最後に社内失業者を未然に防ぐ対策方法を紹介します。
雇用体制の見直し
年功序列や終身雇用などの制度がある企業では、社歴や年齢を重ねると昇給・昇格していた従来の制度を見直すことが必要です。
ジョブ型雇用・成果主義を取り入れ、能力により役職や給料が変わる制度の導入が有効的です。
教育や人材育成の改善
従業員のスキル不足は、上司の教育や人材育成制度が不十分なことも大きい要因となります。そのため、現在の育成制度を見直したり、上司との相性を把握して配置変換をしたりすることも社内失業者を防ぐためには大切です。
退職制度の充実
近年では、日本企業にも早期退職優遇制度が定着してきました。
早期退職を希望する社員には、再就職の支援や退職金を割り増すなどの支援を受けられる場合があります。退職制度を充実させることで、「とりあえず定年までは働かなくては…」と考えている社内失業になり得る社員を未然に防ぐことができるのです。
きちんと見極めて採用する
今いる社員への防ぎ方ではないですが、これから入社してくる未来の社員を社内失業させないためには、選考時にきちんと見極めて採用することが大切になってきます。
責任感があって自分の仕事の責務を全うしてくれる人材なのか、会社にとって利益を出してくれる存在になり得るのか、しっかりと見極めて採用しましょう。
まとめ
企業に在籍していながら仕事がない状態の社内失業の実態について紹介してきました。
社内失業者が出てしまってから対処方法を考えるのではなく、未然に防ぐことも大切です。また、社内失業者を発見したらいち早く改善を行い、社員全員が仕事をしやすい環境づくりを行いましょう。
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