企業にとって新入社員の早期離職は深刻な問題です。せっかく費用をかけて採用しても、入社して数か月ほどで退職してしまえば損失になってしまいます。そこで本記事はそんな現状の中で注目が高まっている「エルダー制度」に関して、目的やメリット・導入事例を含めて解説していきます。
特にエルダー制度を検討している方は、本記事を参考にしてください。
エルダー 制度とは
エルダーとは「先輩・年長」といった意味を持っています。エルダー制度とは、新入社員に対する入社後の教育制度です。
具体的には新入社員に対し、直接指導するのは直属の上司ではなく先輩社員が行います。
エルダー制度では社歴が近い先輩が教育社員となり、指導だけでなく職場生活上の相談役を担います。
メンター制度との違い
メンター制度とエルダー制度は両方とも教育制度ですが、その仕組みが異なります。メンター制度は直接の上司や先輩ではなく、他部署の人間から選ばれることが多いです。またメンター制度では業務上の指導の面よりも、基本的にはメンタル面のサポートを行うために活用されます。
対してエルダー制度は直属の上司ではなく、実際に仕事をともにする先輩社員が新人社員を教育します。メンター制度がメンタル面のサポートを行うのに対して、エルダー制度は人材の早期育成を目的として行われます。
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エルダー制度導入の目的
エルダー制度を導入することの目的は以下の3点です。
- 教育不足による新入社員の離職率を減らせる
- 報連相をスムーズに行うことができるようになる
- エルダー自身の成長につなげることができる
それぞれ解説します。
エルダー制度のメリット
エルダー制度のメリットに関して、3点解説していきます。大きなポイントとして、新入社員のコミュニケーションの活性化や、それに伴う離職の抑制があげられます。
早い段階で新入社員が会社に溶け込んでくれる
大半の新入社員は入社して最初のころは、社内での仕事やコミュニケーションなど不安なことが多いです。特に中途入社は新卒入社と違い、同期がいることも珍しいので、積極的に周りと打ち解けることも簡単ではありません。
直属のエルダーを新入社員につけることで、新入社員にとっても円滑にコミュニケーションを図ることができ、早い段階で会社の環境に溶け込めるようになります。
部署間でのコミュニケーションが活性化する
職場の働きやすさの1つとして、コミュニケーションが円滑になっているかがあります。そこでエルダー制度においてエルダーは、同じ部署の先輩が選ばれることが多いです。
同じ部署の先輩がエルダーとしてつくことで、新入社員は部署内でのふるまいなどを理解することができて、早期に部署内でのコミュニケーションを活性化できるようになります。
新入社員の離職防止につながる
新入社員にとって何も分からない時期に誰にも相談できない状況は、離職につながる原因にもつながります。そこで身近に相談しやすい上司や先輩がいることで安心できる環境づくりができます。
相談しやすい環境を作れば、離職原因を事前に解消することもでき、離職防止につなげることができます。
エルダー制度のデメリット・注意点
一方でエルダー制度にはデメリット・注意点があるためご注意ください。エルダー制度を導入するためには、エルダー側の社員に掛かる負担もあります。
エルダーとなる社員の負担増
エルダーとなる社員は自分の本来の業務の他に、新入社員教育も増えるため、業務負担が増えます。そのため業務過多にならないように、エルダー社員への業務量のフォローを行うことが重要です。
企業側も優秀な人材にエルダー制度を任せたいでしょうが、優秀な社員であれば基本的に仕事も多く振られているはずです。そのため本業とエルダー制度の両立ができるよう、サポートを忘れずに行って下さい。
エルダーと新入社員の相性が悪いと逆効果
エルダー制度において、エルダーと新入社員の相性が悪いと逆に、離職率増加や労務上の問題に発展しやすくなってしまいます。
教育をエルダー任せにするのではなく、エルダーと新入社員の関係性を逐一確認してフォローすることが重要です。
新入社員がエルダーに依存してしまう可能性がある
エルダーに教育を任せきりにしてしまうと、新入社員がエルダーに依存してしまう可能性があります。そうなるとエルダー以外とのコミュニケーションが希薄になってしまいます。
そのためエルダーに教育を任せきるのではなく、他の社員も一定の教育への関わりは必要です。
どういう企業が導入すべきか
エルダー制度を導入すべき企業に関して2点紹介していきます。
新入社員の離職率に悩む企業
新入社員の離職原因の1つとして、コミュニケーションや教育の不足があります。そのためエルダー制度を導入してコミュニケーションの円滑化・教育の充実化を図ることが重要です。
社内のコミュニケーションを活発化させたい企業
新入社員は最初社内で、どのようにふるまえば良いか分からない場合が大半です。そこでエルダー制度を用いることで、エルダーからコミュニケーションへの参加を促してもらいやすくなり、結果として社内のコミュニケーションが活発化します。
エルダー制度導入手順・始め方
エルダー制度の導入手順としては以下の4点があります。
- エルダーと新入社員の相性を確認
- エルダーを常にフォローできる体制づくり
- 社内にエルダー制度を認知させる
- 社員教育を行い、エルダーを増やしていく
エルダーと新入社員の相性は大切なので、常に確認しエルダー・新入社員双方をフォローしていくことが重要です。
また事例を多く作り、社内への制度認知を行いエルダー制度を社内に浸透させていくことで、多くのメリットを受けることができます。
エルダー制度を効果的に運用するポイント
エルダー制度を効果的に運用するポイントに関して、3点紹介していきます。協力してくれる社員にもメリットがあることを伝え、会社全体で取り組むことが重要です。
エルダーになる社員にメリットを説明する
メリットが分からずに新入社員を教育しても、効果を得られる可能性は低くなってしまいます。そこでエルダー候補の社員に対してメリットを説明して理解した上で、エルダーとしての業務にあたってもらうことが重要です。
一見すると新入社員のメリットが目立ちますが、教える立場にあたる社員の成長にも繋がります。ただ単に新入社員への教育と捉えず、同時に既存社員の成長にもつなげて行くと良いでしょう。
エルダーへの教え方教育
最初エルダーになる社員にとっては、どのように新入社員を教育すれば良いのかわかりません。そのため最初はエルダーに対して教え方の教育を行うことで、円滑に新入社員教育に入ることができます。対象者への研修や指導、マニュアル作成を行うことで万全の体制でエルダー制度に取り組めます。
エルダーと新入社員両方をフォローする
エルダー制度でも全てエルダーに新入社員教育を任せるのではなく、常にフォローできる体制を整えておくことが重要です。
フォローできる体制を整えておくことでエルダーにとっても、安心して新入社員教育を行うことができます。当事者たちに任せっきりにするのではなく、会社全体で取り組む姿勢を忘れないようにして下さい。
エルダー制度の導入事例
実際にエルダー制度を導入している企業が多くあります。エルダー制度を検討している人事は、以下の導入事例を参考にして下さい。
三井住友海上火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社では、独自の育成プログラムを3年間行っています。具体的にはエルダー制度に似ている、ブラザー・シスター制度を導入して指導役の先輩から新入社員への指導です。
また指導役の先輩に対しても教育を実施しており、エルダー制度を円滑に運用しています。
株式会社イシダテクノ
新入社員は指導前に、「自己啓発計画書」を作成します。その「自己啓発計画書」をもとに、エルダーとなる先輩が新入社員を教育します。
すでに会社の理念や指針を理解している先輩社員がエルダー制度となることで、新入社員にもそのフィロソフィーを受け継ぐことがイシダテクノのスタイルです。
大和ハウス工業株式会社
大和ハウス工業株式会社では、2010年から「OJTエルダー制度」を実施しています。独自のマニュアルを用いてレベルを一定にすることを目指しています。
共通のマニュアルを事前に作成することで、教える側の社員の負担も減り、効率的なエルダー制度の導入が可能です。
まとめ
エルダー制度は、メンタル面でのサポートを行うメンター制度とは異なり、同じ部署の先輩がついて業務に関しての教育を行う制度です。主な目的としては、新入社員の早期離職の防止とコミュニケーションの円滑化です。
本記事を参考にエルダー制度の仕組みの理解を深めていただけたら幸いです。
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