企業の採用担当者の中には、優秀な人材を採用したいと活動しながらも思うようにうまくいかず、頭を悩ませている方もいるでしょう。優秀な人材を確保するために、自社へ入社を検討している候補者に対し、企業の魅力を伝える「アトラクト」は欠かせません。
本記事では、アトラクトの重要性や効果的な使い方の解説と、アトラクトによって採用活動を成功に導くポイントなどを紹介します。
アトラクト採用のポイントを押さえ、候補者の関心を引きつける採用活動へとつなげましょう。
アトラクトとは
アトラクトとは、英語で「(興味を)引く、魅了する」という意味を持ち、採用活動において候補者に対し、採用フェーズごとに自社の魅力を適切に伝える働きかけのことを指します。
ただし、一方的に自社の伝えたいことだけを述べるのでは、効果があまりありません。「候補者が仕事に対し何を求めているのか」「企業の何に関心があるのか」を採用フェーズごとに把握する必要があります。
採用活動におけるアトラクトの役割と抱えている課題
ここでは、アトラクトが採用活動においてどのような役割を持つのか、その重要性を解説するとともに、アトラクト採用が持つ課題について触れていきます。
自社の魅力を伝える働きかけ
採用活動がスムーズに進まないときは、これまでの採用活動で何がいけないのか原因を洗い出し、改善することで候補者の気持ちを掴むような採用活動へと変化させていくことが重要です。
- そこで、アトラクト採用を活用しましょう。
アトラクト採用では、候補者の気持ちに寄り添いニーズに合わせて魅力を発信する必要があります。候補者に「この企業で働きたい」と感じさせることが、アトラクトの役割といえるでしょう。
アトラクト採用が持つ課題
アトラクト採用が抱えている課題は、アトラクト採用の実施に対する候補者の反応が分かりにくいことです。内定辞退者の数を見ると全体の指標にはなるものの、採用フェーズごとの効果を知ることは難しく、次回への改善策を立てにくくなっています。
ほかにも、企業によっては、さまざまな観点からアトラクト採用に注力することで採用担当者の業務負担増へとつながっているケースもあります。
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効果的なアトラクトシーンとテクニック
アトラクトは、段階ごとに変化する候補者の興味・関心に対し、適切に行うことが重要です。
具体的にどのようにすると良いか、それぞれのアトラクトシーンと効果的な方法を見ていきましょう。
インターンシップ・会社説明会など
新卒者を対象とするインターンシップや、転職希望者が参加する会社説明会、社内懇談会といった自社の認知・説明活動においては、アピールする内容を明確にしてアトラクトしましょう。
例えば以下のような内容を発信することで、候補者の興味を引くきっかけになります。
- 企業理念や方針、社風
- 仕事内容・進め方
- 労働環境の良さ
- キャリアアップや成長のための機会の場の説明
- 自社の技術力について
- 社内勉強会・研修会の充実度
- 組織としての課題
インターンシップや社内懇談会では、候補者と実際に働いている社員が接点を作れることから、お互いに理解を深められる場として重要な役割を持ちます。
企業のホームページや広告だけでは伝わりにくい社風や価値観などを伝える良い機会なので、前向きにアピールしていきましょう。
SNSやオンラインでの発信
現代の採用活動において、SNSやブログなどのコンテンツ発信やオンラインの活用は、候補者とのコミュニケーションツールとして大きな影響力を持っています。自社の情報を定期的に発信したり、個人面談をしたりと活用方法はさまざまです。
それぞれの媒体の特徴を生かし、企業の個性を表現することで、他社と差別化したアトラクトが期待できます。
カジュアル面談
本選考に入る前のカジュアル面談は、企業と候補者が1対1の対話を通して相手のことを深く知るとともに、自社の魅力を伝える絶好の場ともいえます。
例えば中途採用において、カジュアル面談の段階では、転職しようと決めている人もいればそうでない人もいます。それぞれどのようにアトラクトすると良いかポイントを押さえましょう。
候補者が仕事に対して求めている条件(転職軸)に合った情報を詳しく伝える
キャリア展望や労働環境などに関して、自社へ転職すると今よりプラスになることをアピールする
大切なことは、候補者のニーズに合わせた伝え方をすることです。誰に対しても同じ内容や伝え方では、有効性のあるアトラクトとはいえないため注意しましょう。
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面接・選考
選考の場では、どんな人に同席してもらうかがポイントです。特に、一緒に働く同僚や上司に同席してもらえると、候補者にとって入社しないと知ることのできない情報を得られる場となり、満足度の高いものになるでしょう。
さらに一次選考、二次選考と場面ごとに面接官を変えると、その面接官ならではの方法で魅力を伝えられるのでおすすめです。
また、中途採用の場合、面接ではどのような人材か見極めながら、候補者の転職軸の詳細を引き出すことが大切です。
相手の志向に合わせてアトラクトしていきましょう。
採用クロージングにおけるオファー面談
- オファー面談は、内定通知後に雇用や労働条件などをすり合わせ、入社意思を固めてもらう場であり、アトラクトをする最後のチャンスです。
- オファー面談では、候補者の転職希望条件を満たしていることはもちろん、他社と比べても自社が希望条件をより満たしているどうかが、大きなポイントになります。
なぜなら、候補者がもらった内定は、自社だけとは限らないからです。候補者が他社から内定をもらっていることを前提に、差別化したアトラクトを実施していきましょう。
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アトラクト採用を成功に導く5つのポイント
各採用フェーズでアトラクトを成功させるために、ポイントを5つ紹介していきます。
印象に残る会社説明会を考える
まずは、会社説明会の進行内容などを見直してみましょう。社員の雰囲気や社風などを候補者に知ってもらうためにも、会社説明会は重要な場といえます。
会社の経営方針や紹介動画といった一般的な内容では、候補者の印象に残らず、自社の魅力を伝えているとはいいきれません。
以下の内容を参考に、会社説明会で注力したいことをまとめてみましょう。
- 候補者の疑問に答える場を設け、コミュニケーションを図る
- 候補者にとって印象に残りやすい司会者や説明者を人選する
- 会社説明会後のプロセス(カジュアル面談→選考など)の詳細を伝え、関係性が切れないよう工夫する
経験値の高い司会者や話の上手な説明者を用意できると、候補者の印象に残る内容が期待できます。終わりに、今後の選考プロセスを具体的に説明すると関係性が切れにくくなるでしょう。
候補者の知りたい分野に長けた人材をアサインする
面接では、それまでの各採用フェーズで得た候補者の情報を、採用に関わるメンバーできちんと把握し、最適な人材をアサインしてアトラクトすることがカギとなります。
- 例えば、職場の人間関係や仕事内容の詳細などを気にする候補者の場合、最終選考前であっても事業部門の人材から話を聞く場を設けるといった対応ができることが理想的です。
- 例えば、ホテルのフロント業務に興味ある人がいたら、実際に携わっている人材を選出することも良いでしょう。
候補者のニーズと競合先を把握する
転職を希望する人の中には、「経験を活かした仕事がしたい」「さらに成長したい」「新たな挑戦をしたい」といった欲求を持っていることが多く、人によってそれぞれそのバランスが異なります。
候補者から徹底的にヒアリングをして、何に比重を置くかを把握し、的確なアトラクトを実施しましょう。
また、ほかにどんな企業に興味を持っているのかも把握しておきましょう。競合先をある程度絞ることによって、対策を打つことが可能です。
自社のアピールポイントを洗い出す
適切なアトラクトをするためには、自社のアピールポイントが何かを洗い出し整理することが必要です。
主に4つの軸に分ける手法によって、抜けや漏れがなく採用活動に役立つ魅力を洗い出せます。
- 理念・目的(創業の背景・戦略・財務基盤など)…組織として何を目指しているか
- 仕事・事業(事業・仕事内容など)…どんな活動をしているか
- 人材・風土(組織風土・人的魅力など)…組織にはどんなメンバーがいるか
- 特権・待遇(報酬体系・仕事環境など)…働く条件や得られる特権は何か
自社の魅力をリストアップしていき、該当する項目に振り分けていきましょう。魅力の洗い出しでは、4つの軸でそれぞれ不足があってはいけません。
そうならないためにも、採用担当者だけでなく各事業部門にも聞き取りを行うと良いでしょう。
競合先とどう違うのかを明確に説明できるようにしておく
候補者の中には、転職先として複数の企業を候補としている人もいるでしょう。
選考段階のヒアリングでも、ある程度競合先の存在を把握しているはずです。その中で競合先との違いを言語化するには、すでに自社にいる転職者に意見してもらうのもひとつの方法です。
競合先から転職してきた人や、競合先への入社を検討していた人などに聞き取りを行うと、実体験に基づいた意見をもらえるでしょう。自社は競合先と比べてどんなことが勝っているか、差別化したアピールの仕方ができるように変換していきます。
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アトラクト採用の活動で意識したいこと
最後に、アトラクト採用をする上で意識したいことを2点紹介します。
自社の魅力はありのままを伝える
それぞれの選考段階のアトラクトで得た情報や印象は、候補者にとって入社後の期待値となりモチベーションにつながります。よって、自社の魅力を誇張せずありのままを伝えることが大切です。
仮に競合先より劣る点があっても、正直に伝えましょう。必要以上のマイナスイメージを与えないよう注意しながら、伝え方を変えてアピールしましょう。
入社・辞退の理由を確認しブラッシュアップしていく
アトラクト採用の課題として「アトラクトをしたことに対する候補者の反応が分かりにくいこと」を挙げましたが、少しでも改善につなげるためには、やはり聞き取り調査は欠かせません。
何より、選考段階で築く良好な関係自体は、これに限らず大切なことなので意識しておきましょう。それぞれの調査を精査して、次の採用活動に活かせるようにブラッシュアップしていくことが重要です。
まとめ
採用活動におけるアトラクトは、各企業が取り入れています。一方で、どうしたら企業の魅力が伝わるのか試行錯誤しながら実施している状態です。
大切なことは、候補者の知りたいこと、会社に求めていることをしっかりと把握し、柔軟なアトラクトをすることです。
本記事で紹介した採用フェーズごとのアトラクト方法や成功ポイントを踏まえながら、企業の採用活動を見直してみてはいかがでしょうか。
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